Dish2 DTD Specification Version 0.1 1999年4月15日 株式会社ピーデー 川俣 晶 akirak@piedey.co.jp 1. 概要  Dish2 DTDは、日本語により電子出版をオーサリングするフォーマットである。  容易に修得でき、気軽に利用できることを特徴とする。  また、日本語対応として、縦書き、ルビ、傍点などをサポートする。  基盤技術としては、次世代Internetの標準技術とされるXML(eXtensible Markup Language)を採用している。  DTDの名前の通り、XMLの文書定義(DTD)として規定されているため、記述したテキストが適切であるか否かを、検証を行うXMLパーサによって確認することができる。  DTDとして記述できないいくつかのルールについては、本ドキュメント内に記述している。  Dish2 DTDの実装例として、電子テキストビューアDish2が存在するが、Dish2 DTDそのものは汎用であり、特定ソフト専用ではない。 2. 背景  日本における電子出版は、いくつかの問題を抱えている。 ・ 主要な電子出版用フォーマットは閉鎖的で資産の再利用が困難 ・ 縦書きなど日本独自の表現への対応が不十分 ・ 高機能すぎて平均的な出版関係者が修得するには高難度  これらは、そもそも、誰のための電子出版か、という根本的な問題に立ち返って考え直すべき課題である。  言うまでもなく、電子出版であっても、その根幹は出版業であり、けしてコンピュータソフトウェアではない。従って、出版業に携わる、編集者、デザイナー、そして著者が修得に困難を感じるような難易度の高い技術は、どれほど高度であっても蜃気楼のようなものであり、現実世界では役に立たない。  また、特定ソフトウェアを利用したオーサリングを行うことでそのソフトウェアから離れられなくなる、というようなソフトウェア販売側のユーザー囲い込み戦略にはまることは、避けねばならない。現代のように変化の激しい時代にあっては、どの技術がユーザーの利便性にマッチするか、刻一刻変化するためだ。  これらの状況から求められる電子出版フォーマット像とは: ・ コンピュータの素人でも容易に修得できる ・ 機能過多であってはならない ・ 主要な日本語表現を扱える ・ 開かれた国際標準に従うこと ・ 蓄積した資産を容易に再利用できる  残念ながら、これらの条件を満たす標準フォーマットの候補は多くない。試みの多くは、紙上のあらゆる日本語組版の表現を画面上に再現しようとして機能過多に陥っている。しかしながら、紙上で読みやすいテキストと、画面上で読みやすいテキストは、質的に異なる。いたずらに紙の再現にこだわり、その結果として機能過多になることは好ましくない。本当に、紙上の表現に寸分違わぬ結果を画面上に求めるなら、画像データとして扱うことを検討すべきだろう。そのような製品は既に存在し、ひろく利用されており、あらためて議論すべきものではない。今、必用とされているのは、紙の再現ではなく、誰でもすぐ使える手軽なテキスト表現の標準である。 3. 適用範囲  Dish2 DTDは以下の目標に適合することを目的とする。 ・ 文書主体の電子出版物を対象とする  画像などのデータを利用可能とはするが、画像集などのコンテンツを作成することは主たる目的とはしない。また、辞書系のコンテンツの記述も目的としない。 ・ 広義の電子出版の提供者が利用する  従来の出版物の電子化はもちろんとして、電子メールマガジンや、個人的な文書のInternetなどによる公開なども範囲として考える。 ・ コンピュータおよび電子的な文書処理の非専門家が利用する  ただし、一般パソコンユーザーが修得する程度の基本知識は必用とする。 ・ スタンドアローンおよびInternetで利用できる  スタンドアローンとはネットワークされない単独のコンピュータを示す用語である。つまり単体のコンピュータ上で利用でき、かつ、Internet上でも利用できることを目標とする。 ・ 1次蓄積用途として利用できる  実際にエンドユーザーへの配布に利用される各種電子出版標準フォーマットに容易に変換できる。つまり、Dish2 DTDに沿ってテキストを作っておけば、他の複数のフォーマットに容易に変換できる。 ・ ボリュームゾーンへの適合  より高度な応用への適合性は追求しない。そのためには、他の手段が存在する。  それよりも、多数派の一般ユーザーの覚え易さ、使い易さを主テーマとし、最もユーザーの多いボリュームゾーンへの適合を目標とする。 4. 機能 ・ 日本語対応 (Unicodeベース) ・ 補助漢字対応 (オプション) ・ 外字(文字鏡)対応 (オプション) ・ 縦書き・横書き ・ ルビ ・ 傍点 ・ イタリック ・ ボールド ・ 固定ピッチフォントでフォーマット済の文字列 ・ ハイパーリンク(テキスト内、テキスト外) ・ 画像挿入 ・ ツリー形式の目次構造 ・ 段落構造の明示 ・ リスト(列挙) 5. リファレンス 5.1. 全体の構造  Dish2 DTDに準拠した文書は、UTF-16ビッグエンディアン、UTF-16リトルエンディアン、UTF-8のいずれかの文字エンコーディングスキームで記述する。  Dish2 DTD文書は要素で構成される。  その他の要素は、すべてこの内側に記述する。  Dish2 DTDは、文書構造を単純化するために、原則的に段落要素

の内側にのみ本文の文字を記述するように規定している(h1,h2,li要素などの内側でも良い)。従って、従来HTMLで行われていたような

無しで文章を書いたり、閉じタグ

の無い

を書くことはすべて許されない。また、

は段落要素であって、行間を空ける機能は持っていない。 5.2. 属性 ・ id 目的:   要素に固有の名前を付ける 適用要素: すべての要素  現在のDish2 DTD内では利用されない情報である。 ・ title 目的:   ツリー構造の目次に入れる項目名を記述する 適用要素: ,

 ツリー構造の目次に入れる項目名と、テキスト内に含める項目名は別々に記述することに注意。テキスト内に含めるときは書式指定が有効であるが、ツリー表示では指定できない。 ・ name 目的:   参照する項目名またはファイル名 適用要素: , ・ href 目的:   ハイパーリンクするURI 適用要素:  ・ src 目的:   読み込む画像のURI 適用要素:  ・ set 目的:   利用する外字集合の名前を指定する 適用要素:   現在のところ、"mojikyo"で文字鏡を指定する方法のみを規定する。 ・ number 目的:   外字の番号を指定する 適用要素:   現在のところ、文字鏡番号を指定する方法のみを規定する。 5.3. 要素  注意:すべての要素に適用される属性は列挙していない。 ・ dish2-doc 目的:   文書全体を示す 属性:   title  ルート要素はdish2-docでなければならない。 ・ div 目的:   ある範囲の段落をグループ化する 属性:   title 出現:   ,
の下に書くことができる  div要素は、ツリー構造のメニューの中に表示される一つの項目の範囲を規定する。 ・ h1, h2 目的:   ある範囲の段落をグループ化する 出現:   
の下に書くことができる  見出しを記述する。ツリー構造とは関係ない。 ・ p 目的:   段落の範囲を示す 出現:   
の下に書くことができる  段落は日本語的な意味での段落として扱われ、段落間に空白などは入らない。 ・ ul 目的:   番号を伴わないリストを記述する 出現:   
の下に書くことができる ・ li 目的:   
    要素に含まれる項目を記述する 出現:   
      の下に書くことができる ・ udc 目的:   外字を記述する 属性:   set, number 出現:   

      ,

      ,

      ,

    • の下に書くことができる ・ strong, b 目的:   ボールド文字を指定する 出現:   

      ,

      ,

      ,

    • の下に書くことができる ・ em, i 目的:   イタリック文字を指定する 出現:   

      ,

      ,

      ,

    • の下に書くことができる ・ u 目的:   アンダーライン文字を指定する 出現:   

      ,

      ,

      ,

    • の下に書くことができる ・ tt 目的:   固定ピッチフォントを使うことを指定する 出現:   

      ,

      ,

      ,

    • の下に書くことができる ・ sidedots 目的:   傍点を指定する 出現:   

      ,

      ,

      ,

    • の下に書くことができる ・ ruby 目的:   ルビを指定する 出現:   

      ,

      ,

      ,

    • の下に書くことができる  rb, rt, rp要素との組み合わせでルビを表現する。 ・ rb 目的:   ルビの主文字列を指定する 出現:   の下に書くことができる ・ rt 目的:   ルビの副文字列を指定する 出現:   の下に書くことができる ・ rp 目的:   ダミー 出現:   の下に書くことができる  W3CのRuby WDに合わせるために含めたもので、何を書いても無視される。 ・ noteref 目的:   文書内ハイパー参照 属性:   name 出現:   

      ,

      ,

      ,

    • の下に書くことができる  選択されると、ツリー目次の中で、nameと一致する項目を表示する。 ・ fileref 目的:   外部ファイル参照 属性:   name 出現:   

      ,

      ,

      ,

    • の下に書くことができる  選択されると、指定された外部ファイルをOSに開くように指示する。 ・ a 目的:   外部URI参照 属性:   href 出現:   

      ,

      ,

      ,

    • の下に書くことができる  選択されると、指定された外部ファイルをWebブラウザに開くように指示する。 ・ img 目的:   指定URIの画像挿入 属性:   src 出現:   

      ,

      ,

      ,

    • の下に書くことができる  指定されたURIの画像データを表示する。サポートする形式は、PNGまたはJPEGとする。GIFは圧縮アルゴリズムに関する特許料が発生するので採用しない。 6. DTD 変更履歴 1999年4月15日 Dish2 DTD Specification Version 0.1  最初のリリース 以上